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画家 池田学さんの作品はミクロの視点とマクロの視点の奇蹟的な融合だ!!

 

池田学さんという画家をご存知でしょうか。


ペンで描かれた、1ミリにも満たない緻密な線で、広大な世界を描き、現在、国際的にも注目されているアーティストだそうです。


恥ずかしながら、結婚20周年記念旅行で偶然立ち寄った金沢21世紀美術館で開催中だった「池田学展 The Pen ー凝縮の宇宙ー」で出会うまで、存じ上げませんでした。


チケット売り場の長い行列で待っている間に、Wikipediaで池田学さんの概要を調べました。


「池田 学(いけだ まなぶ、1973年〈昭和48年〉6月18日 - )は、日本の画家。カラーインクとペンを用いたボリューム感のある緻密描写が特徴的。

アクリル顔料インク、丸ペン、フランス製美術用紙「アルシュ」を使い作品を描く。全体の下絵は描かずイメージしながら緻密に描くため、1日(8時間)に描けるのは10センチメートル四方ほど。

趣味はロッククライミングフリースタイルスキー。」(以上、Wikipediaより)


なるほど、1日に描けるのは10センチメートル四方じゃたいへんだなあと思いながら展示室に入ると、いきなり度肝を抜かれます。


例えばこの「誕生」という作品です。

 

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池田学《誕生》2013-2016年 紙にペン、インク、透明水彩 300×400cm Photo by Eric Tadsen for Chazen Museum of Art ©IKEDA Manabu / Courtesy Mizuma Art Gallery, Tokyo/ Singapore


「誕生」は何と4メートル×3メートルもあり、展示室の一つの壁を占有しているほど大きな作品です。


海の中から数え切れないほどの花々を咲かせた巨木が立ち上がっているのですが、作品のあちこちに独特のモチーフが散りばめられ、今まで見たこともない稀有な世界観を形作っています。


ところが、作品に近づいて見ると、もう一度度肝を抜かれます。


ペンの先にアクリル絵の具をつけて描いているとのことなのですが、10センチメートルほどに近づいてやっと解る極めて緻密な線で、細部が極めて丁寧に描き込まれているのです。


近づいて見ないと分からない、さまざまな細かなモチーフ(例えばロープを渡っていくラクダとか、巨木の幹に取り付く人々とか)も描き込まれています。


凄い!!

こんな緻密な描写で、全体としては4メートル×3メートルもの巨大な作品に完成させているなんて!!


後で知ったのですが、この「誕生」は、2011年の東日本大震災を経て、自然の猛威によって人間の命や社会が簡単に奪われてしまうことに深い悲しみと衝撃を受けていた池田学さんが、3年3ヶ月の期間をかけて完成させたのだとか。


「3年3ヶ月」って凄くありませんか?


一日に10センチメートル四方しか描けない作品に「3年3ヶ月」もかけて取り組むなんて!!


展示室には、もっとずっと小さなサイズの動物などを緻密に描いた作品も多数展示されていて、それらも、一つ一つ見ていてたいへん楽しい作品群です。


しかし、圧倒的に心を奪われたのは、「誕生」のような巨大な作品群でした。


葛飾北斎富嶽三十六景みたいな巨大な波にありとあらゆるものが飲み込まれていく「予兆」。(1.9m×3.4m)

 

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池田学《予兆》2008 紙にペン、インク 190×340cm 株式会社サステイナブル・インベスター所蔵 © IKEDA Manabu Courtesy Mizuma Art Gallery 撮影=久家靖秀


巨木なんだかたくさんのお城の集合体なんだかよく分からない巨大な構造物にあらゆる不思議な独特のモチーフが散りばめられた「興亡史」。(2m×2m)

 

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池田学《興亡史》2006 紙にペン、インク 200×200cm 高橋コレクション 撮影:宮島径 ©IKEDA Manabu,Courtesy Mizuma Art Gallery


「池田学展 The Pen ー凝縮の宇宙ー」のポスターにも使われた作品で、戦艦大和を思わせる巨大な沈没船にびっしりと海底生物やあらゆるモチーフが描きこまれた「再生」。(1.62m×1.62m) 

 

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池田学《再生》2001, 紙・ペン・カラーインク, 162×162cm, 浜松市美術館蔵
Copyright Manabu IKEDA, Courtesy Mizuma Art Gallery

 
これらの作品に共通しているのは、まずミクロの視点において考えられないほど緻密で素晴らしいのに、その一方マクロの視点でも、稀有で圧倒的な独特の世界観を表現し得ていることです。


後で知ったのですが、池田学さんは基本的に下書きや構成を事前に考えたりはせず、端の方からプラン無く描いて行くというのです。


そしてある程度すると作品の視点が定まってくるというのです。


下書きを一切せずに、一日に10センチメートル四方ずつ描き進めて、ついに、あのような広大な世界観の作品群を完成させてしまうなんて!!


素人がそんなことをしたら、あんな巨大なサイズに仕上がった時、支離滅裂な結果になってしまうことでしょう。


池田学さんの作品が細部からプラン無く描き進めていっても、あのような稀有な世界観の作品に仕上がるのは、池田学さんの中に確固とした作品の世界観があるからなのでしょう。


画家  池田学さんの作品は、ミクロの視点とマクロの視点の奇蹟的な融合だと思った次第です。